京都 番外編(2) 京都駅駅弁 「はつだ」 和牛弁当

京都駅の焼肉系の駅弁の中で、別格なのは、この「はつだ」の焼肉弁当(1728円)ではないでしょうか。

京都駅では、伊勢丹の地下の弁当コーナーと、SUVACOの弁当売り場で買うことができます。SUVACOでは、レジでいうと出してくれます。なぜか、他の弁当と同じように自由に手に取れるところには並んでいないのです。それだけで、別格の雰囲気を醸し出しています。

「買うことができます」と書いたのは、いつも買えるわけではなく、「タイミングが良ければ、買うことができる」からです。というのも、季節や曜日や時間によっては売り切れなことが多いのです。そう聞くだけで、レア感が高まります。

このページは、「普段使い」の紹介を目指しているので、予約しないと入れない店や、30分以上も並ばないと入れないような店は紹介しないつもりです。だって、毎晩の食事に、その都度、お店に予約を入れるなんて面倒ですし、食べたい時にすぐ食べられないのもストレスが溜まります。ですので、そういう意味で、このお弁当も食べたい時に食べられるという「普段使い」の範疇には当てはまらないかもしれません。1728円という価格も、いつも気軽に買える値段かというと微妙です(伊勢丹のお弁当コーナーには、もっと高級な弁当も並んでいるので、つい、相対的に安い気がしてしまいますが)。

とはいえ、京都駅の駅弁のなかで、他に満足のいく選択肢があまりないので、これも私のローテーションの中に入っています。とりあえず、売り切れかどうかをチェックして、なければ、次の選択肢をという具合です。

さて、お味はというと、薄切り和牛肉に炭火焼の風味と、さっぱり味の甘辛のタレがからまって、焼き鳥っぽい感じはするものの、なかなか香ばしくて美味です。肉とご飯の間に薄くひかれたキャベツも微妙なアクセントになっている気がします。肉の大きさがちょうど良いので、食べやすいところもポイントです。ちょっと脂が唇に残りますが、それでも、冷めても最後まで飽きずにいただくことができます。

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得られる満足度は、人によって異なるでしょうが、万人が満足できるかというと微妙な気がします。特に、ボリュームを期待する方には、これだけだと物足りないかもしれません。胃袋が小さくなりかけてはいるものの、まだ文字どおりの肉食系を好む方で、かつ、財布の紐が緩み気味の方には、お勧めのお弁当です。

京都観光スポット(5) 雨の日におすすめ 鹿ヶ谷 泉屋博古館(せんおくはくこかん)

京都、岡崎の東側、鹿ヶ谷にあります。平安神宮や動物園あたりから徒歩でアクセス可能です。また、哲学の道から永観堂南禅寺などに向かう途中です。

戦前の財閥である住友家(現在の住友グループ)の芸術品のコレクションが展示されています。ここの目玉は、古代中国の青銅器です。住友家第15代当主の住友友純(春翠、1864~1926)が蒐集したものだそうです。泉屋博古館の「泉屋(いずみや)」というのは住友家の商号とのこと。

京都でわざわざ古代中国の青銅器をみるか?

行ってみるまでは、どうもその意義が納得できませんでした。しかし、そんな疑問が瞬時にかき消されるほど、ここのコレクションは素晴らしい。この規模と内容のものを一度に観ることができる場所は、国内はおろか世界中のどこにもないらしく、本場中国でも難しいとのことです。中国系の観光客と思しき方々も、結構、来られています。とはいえ、いつ行っても観光客はそれほど多くなく、ゆっくり鑑賞できます。

最後には飽きてしまうぐらいの量なのですが、細かい細工などをつぶさに見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。古代中国には青銅より硬い金属はなかったそうなので、この細かい模様の全てが鋳造されたとのこと(つまり、あとから削ったり彫ったりはしていない)。中には、どうやって制作されたかがわからないものもあるそうです。古いものは紀元前11世紀頃のものです。その頃、日本は縄文時代。用途や年代別に並んでいるので、時代によって模様や形が変化していく様もよくわかります。

茶人でもある春翠が、花器として青銅器を購入したのが、青銅器に興味を持ったきっかけだとか。また、銅の精錬や銅銀商、銅山経営などをしていた住友家の家業(のちの住友金属)にもつながるので青銅器を蒐集し始めたというようなことも、紹介文には書かれていました。

それにしても、コレクションのスケールに圧倒されます。数寄者の蒐集にかける情熱と財力たるや。

この泉屋博古館自体も、住友春翠の別荘だったところに建っているとのこと。別荘地にふさわしく、2つの建物をつなぐ通路から見る庭越しの東山の借景(=遠くの風景を庭の景色の一部に取り入れること)が見事です。

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我が国の近代化の過程で財をなした人々が、京都・東山のあたりに競って別荘を買い求めたり、さまざまな美術品を蒐集したりしたというのが、京都の歴史の一部であることが、ここに来るとよくわかります。

青銅器は常設展示ではなく、年間の半分ぐらいは入れ替え等で休館ですので、行かれる際には事前のチェックをおすすめします。

最後に小ネタを一つ。ヴィラフォンテーヌというホテルのチェーンがあります。住友不動産系列のホテルだそうですが、このヴィラフォンテーヌが、ヴィラ(=館)+フォンテーヌ(=泉)で、住友家の商号の「泉屋」に由来することを最近、週刊誌で知りました。


京都ひとり飯(6) 烏丸御池 ナポリタン 喫茶店 マドラグ

年に数回ですが、昔ながらのケチャップ味のナポリタン・スパゲティが食べたくなります。京都でも、昔ながらのナポリタンの味を求めて、グルメサイトで検索しては、チャレンジしています。

私の中での「昔ながらのナポリタン」の定義は、ケチャップ味、ハムかウインナー、ピーマン、玉ねぎ入り、お好みで粉チーズトッピングです。アルデンテにはこだわりません。どちらかというと、太めの麺でアルデンテではない方がイメージに近いです。

先日は喫茶店マドラグに伺いました。烏丸御池の交差点を北上し、京都国際マンガミュージアムの北側の通りを西に向かいます。数ブロック行ったところの右側にあります。いかにも喫茶店といった店構えです。

こちらのは鉄板ナポリタン。鉄板に薄く引かれた卵焼きの上に山盛りの細麺です。ウインナーではなくハムです。人参も少し入っています。麺は400gぐらいでしょうか。胃袋が悲鳴を上げそうな量です。味は、こってりケチャップ味。麺が細めのところを除けば、「昔ながらのナポリタン」のイメージ通りです。鉄板が熱いせいで、最後まであまり冷めません。終盤、多少麺が伸びてくるのと、味に飽き気味になるのとで、ペースが鈍ります。そんな時には粉チーズの出番です。タバスコも出されますが、私のナポリタンのイメージには合わないかなと思うので使いません。

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ふう、ごちそうさま。満足です。当分、ナポリタンはいいかなという気分させてくれる逸品です。しばらくしたら、また、懐かしくなることでしょう。

くつろげる喫茶店という感じの内装です。夜の客層は、地元の常連さんが大半のような印象ですが、一人でも全く抵抗なく入れます。つい、長居をしたくなるような空気が漂っています。

「コロナ」というかつて河原町あった名店の「たまごサンド」のレシピを引き継いてでいるらしく、昼間は、そのたまごサンド目当てのお客さんで混雑しているらしいです。私が行った時には(夜の7時ぐらい)、「コロナサンドは売り切れました」という張り紙が表にありました。

今度は、評判のたまごサンドとチーズカレートーストにも挑戦してみたいです。


京都観光スポット(4) 六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)

雨の日に傘をさしながら、庭園などを散策するのも悪くはありませんが、そんな時こそ、室内で仏像などとゆっくり対面するのも一興です。京都の街中付近では、三十三間堂東寺の仏像が有名ですが、団体客に押されながらの拝観は疲れます。

私は、六波羅蜜寺の木造彫刻が好きです。ここは、ほぼ貸切で拝観できます。

六波羅蜜寺は、京都の東山、清水寺などと鴨川の間あたりにあります。祇園の南側です。京都駅からは、タクシーでもワンメータ・プラスぐらいで行けます。清水寺あたりから祇園方面に向かう途中に、寄り道できる場所です。

かつては、相当な規模を誇った名刹だったらしいのですが、いまでは社域も狭く、周囲はすっかりリニューアルされていて、古の面影はなくなってしまっています。しかしながら、本堂の内部に往時が偲ばれます。

ここの宝物館には、平安時代鎌倉時代の木造彫刻が展示されています(本堂拝観を合わせて入場料は600円也)。なかでも私が一番好きなのが、空也上人立像。念仏を唱える空也上人の口から、小さな仏様が一列になって出ている像は、歴史か美術の教科書で見たことがありました。私は、ここで、その像を見て、旧友にばったり出会ったような懐かしさを感じました。念仏を唱えながら市井を歩く空也上人のお姿が表現されています。着衣などがとてもリアルです。念仏を、ちいさな仏様で表現するアイディア(南無阿弥陀仏に対応して6体)も秀逸です。これぞ漫画の「吹き出し」の元祖かもしれません。この像は運慶の四男の康勝の作だそうです。

運慶の作とされる地蔵菩薩坐像など、鎌倉時代に活躍した仏師である運慶やその一門の作品が収蔵されています。また、運慶とその長男、湛慶の像とされる木造もあります。こちらもまた、とてもリアルです。

三十三間堂や当時の方が、数では圧倒的にインパクトがありますが。六波羅蜜寺の像はどれも、リアルで躍動感があり、見ていて飽きません。私は、そんな鎌倉時代の木造彫刻に共感を覚えます。それ以前の仏像は、概して無表情で「鉄仮面」的な印象があったり、あるいは微妙な表情だったりします。どうしても、我々は無意識のうちに顔の中から表情を読み取ることをしてしまうのですが、表情が読み取れないと不安な気持ちになります。仏教の深淵な教義、あるいは、芸術鑑賞の観点からは、仏像のお顔に喜怒哀楽といった俗物的な表情をみるのではなく、その内面性に触れなくてはならないのかもしれませんが、私は、まだまだ修行が足りないようです。

私は、上述の通り、宗教的な境地には達し得ませんが、それでも、古来の仏像がどれほどの数の有名、無名の参拝者たちを眺め、その願いを聞いてきたかということに思いを巡らす時には、畏怖の念すら感じます。時間を忘れて、しばし、ぼーっと仏像と対面することで、日頃の頭の中のモヤモヤを忘れる時間を持つことは貴重ですよね。


京都ひとり飯(5) 四条烏丸 餃子 亮昌(すけまさ)

ときどき無性に餃子が食べたくなります。「王将」も嫌いではないのですが、もう少しヘルシーな感じの餃子を、という気分になると、私は「亮昌(すけまさ)」に行きます。

「亮昌」は、四条烏丸の交差点の南、烏丸高辻の交差点を西の方に3ブロックぐらい行ったところにあります。外にテーブルが置いてあるところが目印です。四条烏丸駅から徒歩10分以内です。

祇園の方にも、餃子で評判のお店が2軒ぐらいあります。そちらもなかなか個性的で良いので、そのうち紹介するかもしれませんが、なにぶん祇園の繁華街にあるので、蝶ネクタイのおじさんやミニスカートのお姉さんに声をかけられつつ、お店にたどり着くのは、小心者の私にはとてもストレスフルです。それらにくらべて「亮昌」は静かな場所にあります。四条烏丸あたりのビジネスホテルからも近いので、出張時のひとり飯にも最適だと思います。

メニューは餃子(焼き餃子6個で320円)がメイン。これにライスやスープなどがついた定食(750円)がありますが、私は、ここでは定食ではなく、餃子(単品)を何皿かいただくことにしています(プチ炭水化物ダイエットのつもり。皮は炭水化物ですが)。

焼き方は油ギトギトではなく、具は野菜中心で、2〜3人前は行けます。食後も胃にはもたれません。ニンニクも控えめで、生姜の風味が効いています。ほどよい大きさと厚さの「羽」つきです。材料に九条葱などが使われていて、京都らしい、優しい餃子です。

餃子の具自体に味噌味が付いているので、それだけでも、つまみやおかずには十分です。最初の一皿は、そのままで、2皿目は特製のタレに昆布辣油や黒煎り七味を加えて味の変化を楽しむのもありです。

餃子2皿に、つまみを一品、ビールジョッキ一杯で、1500円でお釣りが来ます。私の場合、ここでちょい飲みしながら小腹を満たし、このあとバーへ、あるいはカフェで読書やもの書きというのが、たいていの流れです。

お店の雰囲気もカジュアルな感じなので、女性のペア客もよく見かけます。カウンター席もあり、一人でも全く抵抗感なく入れます。


京都ひとり飯 朝食編(3) 四条烏丸 高木珈琲店 高辻本店

四条烏丸の交差点から南に三筋ぐらい下がった交差点(高辻烏丸)を西に入ったところにあります。

昔ながらの喫茶店です。

モーニングは何種類かありますが、私は、いつもAセットを頼みます。
トースト、スクランブル、ポテトサラダ、ソーセージ(2本)、飲み物で680円也。
たっぷりケチャップのスクランブルエッグ、スパイスが効いたポテトサラダに皮がパリパリのソーセージと、いずれもシンプルながらいい個性を出しています。コーヒーは専門店だけあって文句無し。

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見たところ、客層は、地元の人たちが7割、これから観光に行こうという人たちが3割ぐらいでしょうか。店の前には、たいていレンタルされた自転車が止まっています。観光ガイドを見ながら、1日のプランを立てている団体に混じって、スポーツ新聞を読んでいる、絵に描いたような地元のおっちゃんもちらほら。

特にお店が広いわけではなく、隣のテーブルとも近いので、ゆっくりくつろげる感じではありません。また、この種のお店は、すべからく分煙であることは期待できません。絶えず、どこからともなくタバコの煙が漂ってきます。その辺も込みで、たまには昔ながらの喫茶店の雰囲気を味わいたい時には、いいところです。

近くにもう1店舗(烏丸店)があります。メニューは同じなので、私は、雰囲気が好きな高辻本店をもっぱら利用しています。


京都観光スポット(3) ほたる

梅雨に入り、蒸し暑くなってくると、ほたるの季節です。

京都では、意外にも、お手軽な場所で、ほたるが見られます。
京都に来た初めての年に知人から教えてもらったのですが、それ以来、毎年、この季節が来ると心が騒ぎます。

子どものころからほたるという生き物の存在は知っていましたが、初めて見たのは大学生のときでした。それからまた、しばらく実物を見る機会がなく、数年前に京都で再会してからは、あの儚さに、すっかり魅了されています。

いつ見られるのかは、はっきり言ってわかりません。この3年は、だいたい6月の中旬ごろから終わりごろに見ることができました。そろそろかな、という時期に、何度か足を運んでみるしかないです。いまどきは「京都で、ほたるなう」などと、おおやけにつぶやいている人もいそうなので、そちらも参考になるかも。

日が落ちて、夜の8時ぐらいからが見頃の時間帯です。遅い時間は物騒ですし、ほたる以外のものも見えたりするかもしれないので、お勧めはしません。私が行くところは住宅も近いので、あまり遅くだと、地元住民の皆さんの迷惑にもなるでしょうし。

私が行くのは以下の2か所です。
哲学の道銀閣寺から南に伸びる哲学の道沿いの疎水(そすい=用水)でみられます。法然院などがあるあたりの、住宅や街灯の明かりが途絶えた草が茂っているところが鑑賞のポイントです。哲学の道は、夜でも散歩している人たちや、ほたる目当てのカップルなどがいるので、早めの時間ならば、そんなには物騒ではありません。
松ヶ崎の疎水。市バスの洛北高校前のバス停で下車し、北に向かって歩くと、洛北高校の北側で、疎水に行き当たります。地下鉄の松ヶ崎駅で下車し南下しても、疎水にたどり着きます。その疎水沿いに東に歩いていると、草の茂みの中などに飛び交うほたるを見つけることができます。浄水場にたどり着いたら引き返します。ここは周りが住宅地で、近所の幼稚園児ぐらいのこどもが、おばあちゃんに手を引かれて、夕涼みがてら、ほたるを採りに来ていたりします。まわりに普通の民家がみえるので、あまり風情はありませんが、こんな街中にほたるが、という驚きも覚えます。

観光などで来られた方には、タイミングが難しいかもしれませんが、6月の中旬から下旬に京都にいたら、ダメ元で、夕食後にでも足を伸ばしてみたら如何でしょう。まあ、ダメでも、しばしの夕涼みの後、バーで飲み直すものまた、一興ですよね。

ネットで検索すると、もっといろんな場所(主に、ちょっと離れた場所)が紹介されていますので、本格的に見たい方は、そちらもどうぞ。