京都 ひとりごはん ゆっくりランチ(1) 河原町御池 『アンビエント・カフェ mole』

河原町御池の交差点から2筋西の御幸町通を北に1ブロック半ぐらい行ったところにあります。京都市役所の北西の裏あたりといったイメージです。

cafemole.web.fc2.com


本当はあんまり紹介したくないけど、休日の午後をゆったり過ごすにはとってもいいところです。

外観は、ビルの一階に突如出現したジャングルのような異様な光景です。が、室内は、外側の草木からの木漏れ日が差し込んで、なんともいえずまったりとした雰囲気が流れています。まさに、アンビエントな空間です。

休日のちょっと遅めのランチに、たまに伺います。
オーガニック系の食材を使ったカレーや焼き飯がメイン。どちらも玄米を使ったヘルシーな感じがいいです。私は辛いカレーが苦手なのですが、ここのカレーは、私にとっては丁度良いスパイシーなお味です。他にサンドイッチなんかもあります。お値段は、これらにドリンクをセットで1000円ぐらいといったところです。

お客さんの平均年齢はちょい高めです。私がいても浮きません。といって、ご近所の人たちが集う喫茶店という感じでは全くありません。店員さんの接客もクールでスマートです。

カウンターの奥にみえる真空管アンプ。流れる優しいジャズの響き。読みかけの本などを持参し、小一時間過ごすのがなんとも贅沢に感じられる、そんな場所です。


京都 ひとりごはん(10) 烏丸五条 シーフードと白ワイン バル 『Agiyao(あぎやお)』

五条烏丸交差点から、五条通りを烏丸通から東に2筋目をほんの少し北に上ったところにあります。

このお店の二階は同系列の別のお店「あぎやお」です。かつてミシュランの一つ星を獲得したとか。一階はその「セカンド」的な位置づけだと思います。お二階と料理のクオリティ(や値段)にどれぐらい違いがあるのかは、お二階の方が未経験なのでわかりませんが、一階のバルの方のagiyaoは、予約なしで、その日に思い立ってフラっと立ち寄れるカジュアルさが、普段使いには最適です。

京都という土地柄、新鮮なシーフードについては、北海道、九州、北陸、四国などには、とうてい敵いません。素材の新鮮さを京都で期待するのは難しい気がします。しかし工夫次第では、しれに比肩するレベルが達成できることを教えてくれるお店です。ここまで魚にこだわったバルは、他ではあまり見かけないかもしれません。お店で出されるもので、魚以外の肉系の食材は、お通しのイベリコ豚ぐらいです。

お魚ですから、食材は季節によって変わります。カルパッチョフリット、アヒージョなどで、季節のお魚をいただきます。何があるかは、その日の黒板を見るまでわかりません。先日のアヒージョは鱧でした。鱧のような淡白な食材はアヒージョにしても、鱧にこくが出るとか、オリーブオイルに旨味が溶け出して、バゲットと合わせると最高とかということは起きません。でも、オリーブオイルの中で花のように開いた鱧は、私にとっては京都の夏の風物詩のような料理です。年に1回ぐらい食べたくなります。

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このお店は、白ワインのメニューが充実しています。シーフードに合わせるためでしょうが、赤ワインの品揃えはほとんどありません。シーフードに白ワインという組み合わせは、いささか型にはまりすぎている気がしないではありませんが、さりとて、それに争うほどのワイン知識もなく、この料理で、あえて赤ワインが欲しくなるという状況でもないので、白ワインを美味しく飲ませていただいています。

〆はスープパエリアです。要はリゾットのようなものです。濃厚な魚介のスープが凝縮された絶品です。しらふならちょっと濃く感じる味付けかもしれませんが、程よく酔った身にはちょうど良い味です。
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一人だと最初からボトルを頼む勇気はないので、気がむくままグラスワインをお代わりするうちに、結構な量を飲んでしまうことがあります。それでも料理と合わせて1万円をちょっと出るぐらいです(うち6割ぐらいはワイン代)。グラスワイン2杯ぐらいなら、一人6000円でおさまります。普段使いにはちょっと高めかもしれませんが、たまに行ってシーフードと白ワインを存分にというときにはお勧めです。

カウンター席は一人でもくつろげます。接客も心地よいです。


京都 観光スポット(10) 2つの伊藤若冲展 細見美術館と相国寺承天閣美術館

今年は伊藤若冲の生誕300年なんだそうですね。

いま京都で開催中の2つの伊藤若冲展に行ってきました。休日の午後にもかかわらず、どちらも待ち時間なし、行列なしで入れました。さして混んでもおらず、ゆっくり鑑賞できました。

細見美術館(9月4日まで)
入場料1200円(一般)
細見美術館のコレクションを中心に40点ほど。次の展示室に行くのに外階段を通ったりと不思議な感じですが、展示作品は、どれも素晴らしいものばかりで、蒐集家の方のセンスが光ります。こちらはミュージアムショップが充実していて大盛況でした。ショップだけなら入場料なしで利用可。

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相国寺承天閣美術館(12月4日まで)
入場料800円(一般)
釈迦三尊像鹿苑寺金閣寺)の襖絵のほか、動植綵絵の高精度なレプリカ30枚も展示されていました。レプリカとはいえ非常に精巧なもので、若冲の筆致がリアルに伝わってきます。春の東京での若冲の展覧会では4時間待ちなんてニュースになっていましたが、これの実物を見るために4時間も並んだ人がいたのはわかる気がします。

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どちらも若冲の魅力を存分に味わえました。

京都 観光スポット(9) 木屋町二条 『島津製作所 創業記念資料館』

京都出張の「ちょい足し」におすすめ。

「ものづくり立国、日本」の原点のひとつ。
島津製作所 創業記念資料館

www.shimadzu.co.jp

木屋町通を北上し、二条通との角にあります。
ホテルオークラの北東の裏のあたりです。
このあたりは、木屋町を流れる高瀬川の始点でもあります。

日本を代表する企業「島津製作所」の創業の地に建つ記念館です(手前の和風の建物、左の高い建物がホテルオークラ)。

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この地で仏具製造業を営んでいた島津源蔵が、教育用理化学機器製造に転身したのが、今日の「島津製作所」の起源だとか。明治8年(1875年)のことです。その後、後を継いだ長男(二代目、源蔵)は、医療用X線装置をわが国で初めて製造するほか、蓄電池の研究などを進めました。

学生時代に乗っていた中古車のバッテリーがときどきあがって(放電して)しまい、ホームセンターなどで、バッテリーを買って自分で交換していましたが、それが「GS」というバッテリーでした。その当時は「GS」の意味を考えたこともありませんでしたが、それが、島津源蔵のイニシャルに由来することを、ここで初めて知りました。

島津製作所の歴代の製品の数々を見ることができます。古い理化学機器ばかりですが、どれも手作り感にあふれています。欧米をしのぎ、わが国を科学立国に、という気概が感じられるものばかりです。

同社の社員で、ノーベル賞受賞者田中耕一さんの研究業績をわかりやすく説明したビデオもあります。また、田中さんの人となりがよくわかるインタビューのビデオなども見ることができます。田中さんは、本当に、実験オタクなのですね。99%の努力(=絶え間ない実験の繰り返し)と1%のひらめき(=失敗をも楽しむ遊び心)が、ノーベル賞につながったことがよくわかりました。また、このような息の長い研究を許した島津製作所のマネージメントにも敬意を感じます。

万人受けするとは思えないところですが、理系の人たちには、それなりに楽しめる場所だと思います。入場料は300円です。


京都 朝食(6) 河原町御池 『Shava Liva (シャバ リバ)』

河原町御池の交差点の南西の一角、河原町通り、京都ロイヤルホテルの向かいにあります。裏が本能寺です。地下鉄の京都市役所前駅からも至近で、とても便利な場所です。

Shava Livaが何語でどんな意味なのか不明ですが、なんだか1990年代のバブル期をイメージさせるネーミングですね。お店の雰囲気も、高級なラウンジといった感じです。結婚式の二次会でも使われるらしいのですが、いかにもそんな雰囲気です。

ランチ、ディナー、パーティなど、さまざまな使い方ができるみたいですが、ここのモーニングセットもおすすめです。
下の写真はデラックス・モーニング。とはいえ600円。

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厚めのブラウントースト、サラダ、ソーセージ2本、目玉焼き、バナナ、ヨーグルトにコーヒーか紅茶がつきます。ホットコーヒーはお代わり自由です。
普通のモーニング(500円)は、これからバナナとヨーグルトを除いたものです。

トーストがブラウン・ブレッドであること以外は、どれも特段の個性はなく、いたって普通の食材を普通に調理したものです。しかし、コスパは良いです。コーヒーがお代わりできるのも嬉しいですね。

ソファーにクッションが置かれた席などがあり、なんだか朝からくつろいでしまいそうです。トイレも高級感にあふれていました。

かなりの広さなので、朝食時は、他のお客さんとも適当な距離が保てます。なので、喫煙者がいてもあまり気にならないと思います。


京都 観光スポット(8) 岡崎 『無鄰菴(むりんあん)』 

動物園や南禅寺から、ほど近いところにあります。

明治時代の政治家で軍人でもあった、山縣有朋公の別荘の建物と庭園が無鄰菴として公開されています(入場料410円)。京都を代表する名園として紹介されることは多いのですが、団体客、修学旅行生とは無縁なので、いつも比較的空いています。

山縣公は多趣味な人で、作庭もそのうちの一つだったとか。山縣公が手がけた庭園には、椿山荘(東京)などがあります。無鄰菴は山縣公のサポートのもと、7代目小川治兵衛が作庭。

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琵琶湖の疎水が滝として庭内に引き込まれ、涼しげな水音を奏でながら小川を流れます。池ではないので、水が澱んでいないのがいいですね。遠くに望む東山の借景も実に見事。

ここの一つの特徴は、他の日本庭園ならば、苔がはりつけられているところに芝が植わっているところでしょう。そのせいで庭園の「地」となる緑色が明るく鮮やかです。苔は日当たりの良いところを好まないので、木の根元あたりは青々としていても、それ以外のところは茶色く枯れていたりといった庭を時々見かけますが、ここでは、そのようなことがありません。もちろん、ここぞ、というところには苔があります。

縁側に腰かけて、しばし庭を眺めます。なんだか昔懐かしい感覚が湧き上がってきます。他の庭園にはない感じです。多くの日本庭園は、ある意味の非日常性を感じます。枯山水などは、その最たるものでしょう。どうしても禅の心とか神仙思想とかといった言葉で理解しようとしてしまいます。しかし、不思議なことに、無鄰菴では、そのような堅苦しさを感じないのです。ここは、敷居の高い宗教性や芸術性ではなく、来訪者を自然に受け入れる寛容さが際立っている気がします。やっぱり、寺院の庭と別荘の庭の違いでしょうか。そんなわけで、目下のところ私にとっては京都市内で最も落ち着ける庭です。

敷地の一角に建つ洋館は、1903年(明治36年)4月に元老山縣有朋伊藤博文立憲政友会総裁)、桂太郎首相と小村寿太郎外相の4人が日露戦争を決断した、いわゆる「無鄰菴会議」が開かれたところだそうです。私は歴史が苦手で、特に日本の近現代史には疎いのでピンときませんでしたが。


強いて言えば、すぐ脇を車が走るので、時折、静寂が邪魔されることが唯一の難点ですね。


京都観光スポット(7) 嵐山 大悲閣・千光寺

司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズの中に「嵯峨散歩」という巻があります(私の手元にあるのは朝日文庫、「街道をゆく26、嵯峨散歩、仙台・石巻」、1990年第1刷)。もとは「週刊朝日」に1985年1月25日号より連載されたものらしいですが、司馬先生一行が、嵯峨嵐山を散策された雑感などが10章にわたって書かれています。書かれた当時(1980年代前半)の嵐山付近の様子や、そもそものこの土地の成り立ちがよくわかります(多分に司馬史観込みの可能性ありですが)。

「嵯峨散歩」では、「いちど、京の西郊の嵯峨をゆっくり歩いてみたいと思っていた」という書き出しで始まり、ご一行は、「嵯峨の奥の水尾の里」から旅を開始します。数章に渡って、ひとしきり水尾を散策(=ブラタモリ風)ののち、「大悲閣」という章で、いきなり角倉了以(すみのくら りょうい)に話が飛びます。最近、この章を読み、以前、嵐山の大河内山荘から見えた「大悲閣」のことを思い出しました。

大河内山荘からとった下の写真の対岸の山腹に見える建物が大悲閣です。名称といい、佇まいといい、一度は行かねばと思っていましたが、「嵯峨散歩」を読むうちに、その思いは大きくなり、ついに行ってきました。

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その前に、角倉了以と大悲閣について、「嵯峨散歩」と大悲閣でいただいたパンフレットにしたがってまとめておきます。

角倉了以(1554-1614)は、室町末期に生まれ、織田、豊臣、徳川の時代を生きた実業家。角倉家は、もともとこの地で医術と土倉(金融業)を営んでいたが、嵐山に今もある天龍寺が、独自に当時の中国(明)と貿易を行うのに参画し(天龍寺船)、莫大な利益を得た。また、了以は、丹波から陸路で京都に運ばれていた木材を、嵐山を流れる保津川を使って運ぶことを思いつく。しかし、当時の保津川は、流れが急峻すぎて筏を通すには適さない。そこで、莫大な手持ち資金を投入して、川の開削という大規模な土木プロジェクトを敢行し、水運を可能にしたのである。ちなみに、了以は、のちに京都の二条木屋町から伏見まで高瀬川を掘ったことでも有名。大悲閣(千光寺)は、了以が河川開削工事に協力した人々の菩提を弔うために建立し、また、了以自身が晩年に過ごした場所でもあるとのこと。

前置きが長くなりました。まずは、大悲閣への道のりを紹介します。

修学旅行生で賑わう天龍寺前から渡月橋を渡り、保津川の川端の道路を上流方向に歩きます。つまり、観光客や人力車で賑わうのとは対岸です。こちらは、対照的に人通りはまばらです。週末の昼頃にもかかわらず、川遊びをする若者の姿がちらほらと、たまに、大悲閣を目指すと思しき人が前後を歩いている程度です。

渡月橋から5分程度。歩いているうちに、本当に、この道で良いのだろうかと不安になってきました。私が持っている京都の観光ガイドブックには、辛うじて巻末の地図には名前だけが載っているものの、紹介文や写真などは一切ありません。そんな頃合いを見計らったかのように、突然、手作り感満載の案内が現れました。"Greatest View in Kyoto" とは。"est"が小さく書かれているあたりに、若干の迷いがみられますが。このあと到着までに何度か、このテイストの看板が現れます。期待と不安が徐々につのります。

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渡月橋から10分程度。ようやく入り口です。こちらは、まともです。ここからは急な石段やスロープが続きます。

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入り口から8分程度で、ようやく大悲閣に到着です。うーん、なんだろう、この空気は。探偵ナイトスクープの昔のコーナー「小枝のパラダイス」を思い出さずにはいられません。世界的一大観光地の嵐山の一角に、このような空間が存在していたとは。オシャレ系の観光ガイドブックに、全く載っていない理由がわかった気がします。ここには、あえて写真は載せません。京都的寺院観光に飽きた方には、オススメです。天龍寺二尊院などとのコントラストが楽しめることは確かです。

お堂に安置されている角倉了以の木像は、とてもインパクトがあります。工事用のすきを手に、巻いたロープの上に、片膝を立てて座っておられます。工事現場の親方そのもの。

また、大悲閣からの眺めは、自賛するだけあって最上級に価するものでした。眼下には保津川、遠くは京都市内の街並みから、比叡山までが見渡せます。これで400円は高い気がしません。しかも空いていて、ゆっくりできます。随所に、和尚さんの独特なホスピタリティーもあふれています。

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結構、外国人のお客さんがいます。手作り宣伝の効果でしょうか。
ところで、途中で追い抜いた何組かの日本人らしきカップルはどこに行ったのでしょう。いつまでたっても来ません。結局、帰り道でもすれ違いませんでした。何かを察知して引き返したにちがいありません。

ただ、修学旅行生には、本当におすすめです。他よりも絶対に楽しめます。しかも「最近では、数学、理系上達の寺としても有名です(大悲閣のパンフレットより)」だそうですよ。

ところで、司馬先生の「大悲閣」は、長々と角倉了以の話などをした後、肝心の大悲閣は閉まっていて入れず仕舞い、帰り際に偶然に出会った和尚さんに、入れてくれるよう暗にお願いするも、あっけなくスルーされるというオチなのですが(ネタバレですみません)、もし司馬先生ご一行が大悲閣を訪れていたならば、当時の様子がわかったのにと思うと残念です。当時はどうだったのでしょうね。まさか30年前からこのノリだとは思えないのですが。

途中の休憩所の工事が中断している風だったりと、随所に財政的問題が感じられます。お賽銭を多少奮発しておきましたが、もともと大規模な開発のプロジェクトマネージャーの元祖ゆかりの寺なのだから、ゼネコンとか大手デベロッパーあたりが、プロジェクト成功祈願とかで、どんと寄進でもしてくれたらいいのに、と思ったりしました。でも、それで、いまの味わいがなくなったら寂しい気もしますが。

嵐山に行ったら、また立ち寄ってみたい場所の一つです。どうか、これからも、この路線で、観光客を楽しませてください。

参考
大悲閣のブログ「和尚日和」もなかなかイケています。
http://daihikaku.jp/mt/