京都観光スポット(0) ひとりごと

「青もみじ」ということばは、麻生圭子さんの京都紹介の本で、はじめて知りました。「もみじ=紅葉=秋」と思い込んでいたので、目から鱗でした。このことばは、京都ネイティブの方々には常識かもしれませんが、関東に長く住んでいた私には、新鮮でした。そんな楽しみ方があるとは。

桜の季節が過ぎ、ゴールデンウィークの騒々しさも過ぎたころから、入梅前の束の間は、新緑が美しい時期です。特に、紅葉の名所はどこも新しい葉が繁り、目にも鮮やかな青もみじの情景が広がっています。太陽の光を透した緑色のもみじ葉が優しげに風にそよいでいる光景は、カラフルな紅葉とはちがった、でもそれを凌駕するぐらいの美しさです。しかも、この季節、どこの紅葉の名所も、時間帯によっては、ほぼ貸切状態が期待できます。縁側に腰掛け、誰にも邪魔されずに、静かに青もみじを眺めていると、「心が洗われる」のが実感できます。やがて枯れゆく我が身を知らず、青春時代を謳歌する純真無垢な若者、という喩えはちょっと大袈裟でしょうか。

京都に移り住む前にも、仕事でたびたび京都には来ていました。そんなあるとき、京都駅から乗ったタクシーの運転手さんに、「仕事が終わられたら、どこか観光されますか」と聞かれました。「別に」と答える私。京都の主な観光スポットは、すでに何回か行っていたし、こちらは仕事で来ていて、そこらの観光客とは違うよとカッコつけて答えたつもりでした。「せっかく来られたのなら、1時間でも、新幹線に乗られる前に、どこか寄られたらどうでしょう。行ったことがあるところでも、季節によって景色が違いますよ。有名どころでなくても、いいところが京都にはたくさんあります。」と運転手さん。そのことがずっと頭の片隅に引っかかっていました。

その頃の私は、清水寺金閣寺龍安寺銀閣寺などの有名なところは、何回か行ったし、この忙しいのに、今更、あえて混んでいるところに行ってもなあ、といった気分でした。どれも、同じような古いお寺だし。

その後、縁あって京都に住むようになり、ふとタクシーの運転手さんのことばを思い出しました。せっかくなので、仕事の合間をみて、これまで行ったことがないところに出かけてみようかと思い立ちました。

忙中閑あり。今では、忙しいからこそ、静かな庭園で何も考えない時間を持つ、仏像を眺めて心を鎮めるような時間を持つ、といったことが大切なのかもと思っています。いろいろ巡ってわかったことは、旅行ガイドには載っていないところや、載っていても扱いが数行で写真すら載っていないようなところでも、庭、仏像、季節の花、建物、襖絵など、何か一つは見るべきものがあるということです。これこそが、京都の醍醐味。テレビもインターネットもない時代の、ゆっくりとした時の流れを思い浮かべながら、ちょっとした季節の移り変わりにもののあわれを感じた、往時の人々の気持ちに触れた気分です。

そんな、京都の隠れた名所を備忘のために書いておこうと思います。

メジャーなところは見飽きたので、あまり観光客のいないところで、ゆっくりしたいという方にも、おすすめの場所を紹介します。あとは、かつての私のような、出張の合間にちょっとだけ京都に触れてリフレッシュしたいという方々にも、ぜひ参考にしていただければと思います。ほとんどが、京都駅や四条あたりから、バスで片道230円(遠くて片道1時間以内)の範囲です。