京都観光スポット(5) 雨の日におすすめ 鹿ヶ谷 泉屋博古館(せんおくはくこかん)

京都、岡崎の東側、鹿ヶ谷にあります。平安神宮や動物園あたりから徒歩でアクセス可能です。また、哲学の道から永観堂南禅寺などに向かう途中です。

戦前の財閥である住友家(現在の住友グループ)の芸術品のコレクションが展示されています。ここの目玉は、古代中国の青銅器です。住友家第15代当主の住友友純(春翠、1864~1926)が蒐集したものだそうです。泉屋博古館の「泉屋(いずみや)」というのは住友家の商号とのこと。

京都でわざわざ古代中国の青銅器をみるか?

行ってみるまでは、どうもその意義が納得できませんでした。しかし、そんな疑問が瞬時にかき消されるほど、ここのコレクションは素晴らしい。この規模と内容のものを一度に観ることができる場所は、国内はおろか世界中のどこにもないらしく、本場中国でも難しいとのことです。中国系の観光客と思しき方々も、結構、来られています。とはいえ、いつ行っても観光客はそれほど多くなく、ゆっくり鑑賞できます。

最後には飽きてしまうぐらいの量なのですが、細かい細工などをつぶさに見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。古代中国には青銅より硬い金属はなかったそうなので、この細かい模様の全てが鋳造されたとのこと(つまり、あとから削ったり彫ったりはしていない)。中には、どうやって制作されたかがわからないものもあるそうです。古いものは紀元前11世紀頃のものです。その頃、日本は縄文時代。用途や年代別に並んでいるので、時代によって模様や形が変化していく様もよくわかります。

茶人でもある春翠が、花器として青銅器を購入したのが、青銅器に興味を持ったきっかけだとか。また、銅の精錬や銅銀商、銅山経営などをしていた住友家の家業(のちの住友金属)にもつながるので青銅器を蒐集し始めたというようなことも、紹介文には書かれていました。

それにしても、コレクションのスケールに圧倒されます。数寄者の蒐集にかける情熱と財力たるや。

この泉屋博古館自体も、住友春翠の別荘だったところに建っているとのこと。別荘地にふさわしく、2つの建物をつなぐ通路から見る庭越しの東山の借景(=遠くの風景を庭の景色の一部に取り入れること)が見事です。

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我が国の近代化の過程で財をなした人々が、京都・東山のあたりに競って別荘を買い求めたり、さまざまな美術品を蒐集したりしたというのが、京都の歴史の一部であることが、ここに来るとよくわかります。

青銅器は常設展示ではなく、年間の半分ぐらいは入れ替え等で休館ですので、行かれる際には事前のチェックをおすすめします。

最後に小ネタを一つ。ヴィラフォンテーヌというホテルのチェーンがあります。住友不動産系列のホテルだそうですが、このヴィラフォンテーヌが、ヴィラ(=館)+フォンテーヌ(=泉)で、住友家の商号の「泉屋」に由来することを最近、週刊誌で知りました。