京都 観光スポット(6) 嵐山 大河内山荘

大河内山荘は戦前からの時代劇の大スター、大河内傳次郎(1898-1962)が、生涯をかけて作り上げた庭園です。もう50年以上前に亡くなっているので、私は、大河内傳次郎の現役時代を知りませんが、子どもの頃に、「笑点」で林家木久蔵(当時)がモノマネをしていたのは覚えています。本当のところ、このモノマネで大河内傳次郎の名前を知っただけで、これ以外では、ほとんど知らないのです。もちろん映画も見たことはありません(200本以上の映画に出演したらしいのですが)。でも、名前しか知らない大河内傳次郎の人となりがわかったような気がする、そんな不思議な、そして素敵な庭園です。

嵐山の天龍寺の北側の有名な竹林を登ったところに、左上方向に上がる小道があり、そこが、大河内山荘の入り口です。地味な看板が立っているだけなので、気をつけていないと見逃してしまいそうです。

入場料が1000円と高めです。実は、私が、最初に嵐山に行った時には、メジャーなところを回って疲れていたこともあり、また、ガイドブックの短い解説から、「俳優が趣味で作ったような庭だしなあ」とある意味、「食わず嫌い」の理解をして、パスしました。だいたい観光地にある有名人の記念館ほど、がっかりするスポットはないですよね。よほどのファンでないかぎり楽しめません。

そんなわけで、2回目の嵐山で、まだ行ったことがないところを回ろうと思って訪問したのが最初でした。それ以来、すっかりリピーターです。

入場料が高め(お抹茶と茶菓子のサービスがもれなく付いていますが)なのと、由緒あるお寺ではないので、かつての私のような、まずは古都らしいメジャーどころを一通りという作戦の観光客のリストには載っていないのでしょう。おかげで、天龍寺渡月橋、竹林などの賑わいに比べて園内は静かです。

30年にわたって大河内傳次郎が私財をつぎ込み、庭師と一緒に、こつこつと創りあげたものだそうです。まず驚くのは、そのスケール。多分、京都界隈では、庭園の広さとしては最大ではないでしょうか。次に、苔や木々の美しさです。そして、随所の凝らされた意匠の数々。敷石や飛び石、嵐山の借景、高台からは遠く比叡山を望むこともできます。また、小倉山や保津川も一望できます。いろんな風景が次々に現れ、まるで一本の映画を見ているよう、といえばちょっと大げさですが。大河内傳次郎が地形や植生を熟知し、それを生かすのに、そして、まずは自身が楽しむために、最大限の愛情と手間と資金を注いだことは想像に難くありません。

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パンフレットの園内地図の順序通りに歩くことをお勧めします。まずは、地図の☆印のところまでいって、ぜひ振り返って見てください。その光景に、私は思わず息を飲みました。そのあとも、名優にして、もともとは脚本家をめざした大河内傳次郎の描いたストーリーが堪能できます。並外れた芸術性を再認識できます。