京都 ひとりごはん(11) おでん 『蛸長』と『だるまときんぎょ』

京都の夏の暑さは格別です。そんな酷暑の夜に、あえて熱々のおでんもまた一興です。四条河原町付近の2つのお店は、どちらも冬場はなかなか入れない人気店ですが、夏場は比較的空いていてます。澄んだ薄い色の出汁の風味が優しく、関東や名古屋のおでんとは違った、いや全く別の食べ物といってもいいかもしれません。まして、コンビニのおでんと比べるべくもない世界です(ま、比較すること自体、失礼な話ですね)。

まずは、『蛸長』から。

祇園四条駅から川端通を下ったところにあります。

池波正太郎のエッセーにも紹介されている老舗です(池波正太郎著、「むかしの味」、新潮社、1986)。それによると、出版時点ですでに3代目だそうで、関西でも1、2をあらそう古い店とのこと。別のエッセー(「散歩のとき何か食べたくなって」)には、この地で70年続くと書かれていましたので、すでに創業100年超かもしれません。煮込みのおでんは江戸で生まれたのだが、料理屋として発展したのは関西によるところが大であったとも書いてあります。店名にもなっている蛸が名物で、それ以外にも京都らしいおでん種で酒が飲めることを池波先生も絶賛されています。

カウンター10席ぐらいのこじんまりしたお店です。祇園から四条方面に向かう途中なので、通りがかりの観光客の方も結構おられるし、常連さんもおられる感じです。外国の方もふらっと入ってこられます。

メニューは全て漢字で、しかも値段が書かれていません。ちょっと怖いのですが、だいたい程よく食べて飲んで6,000円ぐらいです。次に紹介する「だるまときんぎょ」と同じぐらいの価格ではないかと推察されます。

メニューは、池波先生も絶賛の蛸のほか、大根、玉子などの定番、湯葉や九条葱などの京都らしいものなど10数種類です。季節によって異なります。巻甘藍(ロールキャベツ)や紐育(レタス)など、モダンな食材もあったりします。夏には、賀茂茄子など夏の種を楽しめます。

ここでは燗酒がおすすめです(銘柄は1種類のみ)。私は、普段は燗酒を飲まないのですが、以前にここの常連さんに教えていただいて以来、ここでは燗酒が私の定番です。確かに、ここの燗酒はマイルドで、おでんによく合います。

最後は「七五三飯」です。七五三と書いて「しめ」と読むのだそうです。蛸飯の焼きおにぎりが、おでんのお汁に入ったものが出てきます。お匙で崩しながらいただきます。蛸の味が染みたご飯が香ばしい焼きおにぎりになっているだけでも美味しいのに、それにおでんの出汁が絡まって絶品です。

閉店時間が早いので、さっと食べてバーあたりへというのが、正しい使い方ですね。

ついで、『だるまときんぎょ』です。

四条から寺町通を下って、高辻通を超えたところにあります。

7つぐらいのカウンター席とテーブルが4つぐらい。こちらは目立ちにくい場所柄、地元の人の方が7、観光客が3ぐらいの割合でしょうか。

定番の食材に加えて、モダンな食材がいろいろあって楽しくなります。なかでも「アボカド」が意外にも絶品です。オクラやトマトなども面白いです。こちらも季節によって種が変わります。夏には夏らしいものを味わえます。

名物のポテトサラダなどもいけます。おでんの玉子とジャガイモをつぶしたものです。〆は、春雨ヌードルか雑炊。どちらも小腹を満たすのに十分です。

ここの日本酒のチョイスが私の好みにあっている気がします(こちらは、冷です)。すっきりでフルーティなものが揃っていて、ついつい飲みすぎてしまいまうのが、ちょっと難あり。

こちらは夜遅くまで開いているので、いろんな使い方ができます。

どちらも四条河原町付近でのひとりちょい飲みには最適です。